あお
一般社団法人栄養医学療養ケア研究所 代表理事/管理栄養士
保育園・医療福祉の給食現場を経て、管理栄養士として老健・生活習慣病外来に従事。エビデンスに基づく栄養ケアを普及し、サロン200名・セミナー50回/3,000名超。誰もが楽しく長生きする栄養改善を使命とする。

食育基本法は、食育を国民運動として推進するための根拠法です。2005年に制定されて以来、食育推進基本計画と連動しながら日本の食育施策の基盤となってきました。そして2026年5月27日、社会情勢の変化に対応するための改正が行われました。
「食育基本法が改正されたことは知っているが、どこが変わったのかよくわからない」「そもそも食育基本法の内容を正確に把握できていない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、食育基本法の目的・基本理念・構成から、2026年5月改正の主な変更点まで、管理栄養士・栄養士・食育担当者の方に向けてわかりやすく解説します。
まずは食育基本法の基本的な内容を確認しておきましょう。制定の背景・目的・法律の構成について整理します。
食育基本法は2005年(平成17年)6月に制定されました。制定の背景には、食生活の乱れ・肥満や生活習慣病の増加・食の安全に対する不安・食文化の喪失といった社会問題への対応があります。食育を「生きるための基礎となるもの」と位置づけ、国民が生涯にわたって健全な食生活を実践できるよう支援することを目的としています。
法律の前文では、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付け」ると明記されています。食育は単なる食事指導にとどまらず、食に関する知識・判断力・実践力を育み、心身の健康・豊かな人間形成・食文化の継承・農林漁業の活性化などを目指す総合的な取り組みとして定義されています。
食育基本法は、前文・第1章(総則)・第2章(食育推進基本計画等)・第3章(基本的施策)・第4章(食育推進会議等)という構成になっています。総則では目的・定義・基本理念・国・地方公共団体・教育関係者・食品関連事業者・国民それぞれの責務が規定されています。
第3章の基本的施策では、家庭・学校・保育所・地域における食育推進、農林漁業体験の機会の促進、食品の安全性に関する調査・情報提供、食文化の継承・伝統的食文化の振興などが定められています。これらの施策を計画的に推進するために「食育推進基本計画」が策定されます。
食育基本法には7つの基本理念が掲げられており、食育推進の方向性を示しています。各理念の内容を確認しておきましょう。

第1:国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成。食育を通じて生涯にわたり健全な心身と豊かな人間性を育む。
第2:食に関する感謝の念と理解。食の生産・流通・消費のプロセスを理解し、感謝の心を育む。
第3:食育推進運動の展開。国民・民間団体が自発的に参加できる国民運動を展開する。
第4:子どもの食育における保護者・教育関係者の役割。家庭・学校が連携して子どもの食育を推進する。
第5:食に関する体験活動と食育推進活動の実践。農林漁業体験・料理体験などを通じた実践的な食育を推進する。
第6:伝統的な食文化・環境と調和した生産等への配慮と農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献。日本の食文化の継承と農業振興を食育と連動させる。
第7:食品の安全性の確保等における食育の役割。食品の安全性に関する知識と理解を深める。
食育基本法のもとで策定される「食育推進基本計画」は、国の食育施策の具体的な数値目標と施策の方針を定める計画です。
食育基本法では、国・都道府県・市町村それぞれに食育推進の責務と役割が定められています。国は「食育推進基本計画」を策定し、都道府県は「都道府県食育推進計画」を、市町村は「市町村食育推進計画」を策定するよう努めることが定められています(都道府県は義務、市町村は努力義務)。
2021年度から2025年度を対象とした「第4次食育推進基本計画」では、「生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進」「持続可能な食を支える食育の推進」「新たな日常やデジタル化に対応した食育の推進」が3本の柱とされました。2026年改正を受け、第5次計画の策定が見込まれます。
2026年5月27日に食育基本法が改正されました。改正の背景と主な変更点を確認しておきましょう。
今回の改正は、食をめぐる社会情勢の変化への対応が主な背景です。食料安全保障の重要性の高まり、農林漁業の担い手不足、高齢化・単身世帯増加に伴う食環境の変化、そしてデジタル化・グローバル化による食情報の多様化といった課題が指摘されるなか、食育の射程を広げ、関連政策との連携を強化する方向で改正が行われました。
なお、改正食育基本法は2026年5月27日に公布・施行されています(農林水産省「食育基本法」関連情報より)。
改正の主なポイントは4点です。①食料安全保障と食育の連携:食料の安定供給確保の重要性が明文化され、食育がその文脈でも位置づけられました。②農林漁業教育の促進:農林漁業体験を通じた教育の推進が一層強調され、生産現場への理解を深める食育が求められるようになりました。
③大人・高齢者向け食環境の整備:子どもだけでなく成人・高齢者を含む生涯にわたる食育として、食環境の整備(栄養情報の提供・健全な食習慣の維持支援)が明確に位置づけられました。④PDCAサイクルと栄養教諭の明示:食育推進施策のPDCAサイクルによる評価・改善が規定され、栄養教諭の役割も条文に明示されました。管理栄養士・栄養士を含む専門職の連携がより重要視される内容となっています。
食育基本法は管理栄養士・栄養士の業務と直接関わる場面が多い法律です。現場での実務との関係を整理しておきましょう。

管理栄養士・栄養士は、病院・学校・保育所・地域などさまざまな場で食育推進の担い手として活動しています。食育基本法が定める「学校・保育所等における食育の推進」の条文は、学校栄養士・栄養教諭の業務の根拠のひとつとなっています。また、2026年改正で栄養教諭の役割が明示されたことで、専門職としての食育への関与が一層期待されるようになりました。
地域の食育推進計画策定・食育イベントの企画・栄養相談・食事調査など、食育基本法を根拠とした取り組みは多岐にわたります。改正内容を正確に把握し、自分の業務にどう関連するかを理解しておくことが、専門職としての食育推進活動の質向上につながります。
食育基本法は2005年の制定以来、日本の食育施策の根拠となってきた重要な法律です。2026年5月27日の改正では、食料安全保障との連携・農林漁業教育の促進・成人・高齢者向け食環境の整備・PDCAサイクルと栄養教諭の明示という4つのポイントで内容が強化されました。
管理栄養士・栄養士・食育担当者の方は、改正内容を正確に把握したうえで、現場での食育推進活動に活かしていきましょう。食育基本法と食育推進基本計画の内容を理解することが、専門職としての業務の根拠を明確にするうえでも重要です。
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