あお
一般社団法人栄養医学療養ケア研究所 代表理事/管理栄養士
保育園・医療福祉の給食現場を経て、管理栄養士として老健・生活習慣病外来に従事。エビデンスに基づく栄養ケアを普及し、サロン200名・セミナー50回/3,000名超。誰もが楽しく長生きする栄養改善を使命とする。

栄養アセスメントは、管理栄養士・栄養士が栄養指導や栄養管理を行ううえで欠かせない基礎プロセスです。しかし、「5つの指標が何かよくわからない」「書き方の形式が統一されていない」「栄養スクリーニングとどう違うのか」と悩む方も少なくありません。
栄養アセスメントとは、対象者の栄養状態を多角的に評価し、問題点と原因を明らかにするための体系的な情報収集・分析プロセスです。正確なアセスメントがあってこそ、適切な栄養ケア計画の立案が可能になります。
この記事では、栄養アセスメントの定義・目的から5つの指標・項目の内容、現場で使える書き方・記入例まで、管理栄養士・栄養士の視点でわかりやすく解説します。
栄養アセスメントとは何か、まずは基本的な定義と目的を整理し、混同されやすい「栄養スクリーニング」との違いも確認しておきましょう。
栄養アセスメント(Nutritional Assessment)とは、対象者の栄養状態を多角的・体系的に評価し、栄養上の問題点とその原因を特定するプロセスです。栄養管理プロセス(NCP:Nutrition Care Process)のなかでは、「栄養アセスメント」「栄養診断」「栄養介入」「モニタリング・評価」という4つのステップの最初に位置し、すべての栄養ケアの基盤となります。
アセスメントの目的は、対象者がどのような栄養状態にあるかを客観的に把握し、栄養改善・維持のための具体的な介入方針を決める根拠とすることです。情報収集が不十分だったり評価が主観的になったりすると、その後の栄養ケア計画の精度が下がるため、正確なアセスメントが求められます。
「栄養スクリーニング」と「栄養アセスメント」は混同されやすい用語ですが、役割が異なります。栄養スクリーニングは「栄養リスクがあるかどうかを短時間で簡易的に判別する」ふるい分けのプロセスです。MNA(簡易栄養状態評価表)やMUST(栄養不良スクリーニングツール)などのツールが広く使われます。
一方、栄養アセスメントはスクリーニングで「リスクあり」と判定された対象者に対して実施する、より詳細な評価です。身体計測・臨床検査・食事調査・問診などの複数の情報を統合し、「どのような栄養問題があり、なぜそうなっているか」を明らかにします。スクリーニング→アセスメント→診断→介入という流れが栄養管理の基本的なプロセスです。
栄養アセスメントでは、複数の情報源から多角的に評価を行います。主な指標は大きく5つに分類されます。これらを組み合わせることで、対象者の栄養状態をより正確に把握できます。

身体計測は、体重・身長・BMI(体格指数)・体組成(筋肉量・体脂肪率)・上腕周囲長・下腿周囲長などの測定値を評価します。BMIは「体重(kg)÷身長(m)²」で算出し、18.5未満は低体重、25以上は肥満(1度)と判定されます(日本肥満学会基準)。
体重変化の評価も重要で、「6ヵ月で10%以上の体重減少」は栄養不良の重要なサインとされています。筋肉量の評価には体組成計による測定のほか、握力測定や下腿周囲長(CC:Calf Circumference)が簡易指標として用いられます。現場では測定しやすく再現性の高い方法を選択することが重要です。
臨床検査値は、栄養状態を客観的に評価するための重要な指標です。タンパク質栄養状態の評価には、血清アルブミン値(Alb)・トランスフェリン・プレアルブミン(急速代謝タンパク)などが用いられます。アルブミンは半減期が約20日と長いため長期的な栄養状態の指標となり、プレアルブミンは半減期が約2日と短く短期的な変化を反映します。
そのほか、ヘモグロビン・血清鉄・フェリチン(鉄欠乏性貧血)、血清亜鉛・銅(微量元素)、血糖・HbA1c(糖代謝)、総リンパ球数(免疫能)なども栄養評価に活用されます。臨床検査値は単独ではなく、ほかの指標と組み合わせて総合的に解釈することが基本です。
食事摂取状況の評価では、「何をどのくらい食べているか」を定量的・定性的に把握します。代表的な方法として、24時間思い出し法(前日の食事を詳細に聞き取る)、食事記録法(一定期間の食事を記録する)、食物摂取頻度調査法(FFQ:よく食べる食品の頻度を聴取する)などがあります。
得られた食事情報から、エネルギー・タンパク質・脂質・炭水化物・各種ビタミン・ミネラルなどの摂取量を推計し、「日本人の食事摂取基準」の推奨量・目標量と比較します。食事調査にはいずれも記憶のあいまいさや過小申告などの誤差が生じやすいため、複数の方法を組み合わせることが望ましいです。
身体症状・臨床所見(クリニカルサイン)は、栄養不足や過剰の兆候を視覚的・触診的に評価するものです。たとえば、皮膚の乾燥・つや消え(ビタミンA・必須脂肪酸不足)、口角炎・口内炎(ビタミンB₂不足)、浮腫(タンパク質不足・心不全)、脱毛(タンパク質・亜鉛・鉄不足)などがあります。
また、筋肉量の低下・筋力低下(サルコペニアの指標)、褥瘡(じょくそう)の有無・深度なども重要な臨床所見です。身体症状は主観的な情報も含まれるため、医師・看護師・理学療法士など多職種からの情報を収集し、複合的に判断することが必要です。
栄養状態は、身体的な要因だけでなく生活環境・社会的背景にも大きく影響されます。評価すべき項目として、食事の準備ができる環境かどうか(独居・介護の有無・調理能力)、経済的な状況(食費の確保ができているか)、食欲・食嗜好・宗教的食事制限、服薬状況(薬が栄養素の吸収に影響する場合)などがあります。
特に高齢者や在宅療養者では、こうした背景要因が栄養摂取に直接影響するケースが多く、アセスメントで見落とすと適切な介入につながりません。医療ソーシャルワーカーや訪問看護師などと連携しながら情報を収集することが現場では重要です。
栄養アセスメントで収集した情報をどのように整理し、記録するかが実務のポイントです。ここでは書き方の基本手順と記入例を紹介します。

栄養アセスメントの記録には、医療分野で広く使われる「SOAPノート」形式が一般的です。S(Subjective:主観的情報)は対象者から聞き取った食欲・食事の好み・体の不調など主観的な訴えを記載します。O(Objective:客観的情報)は身体計測値・臨床検査値・食事調査結果など測定・観察した客観的データを記載します。
A(Assessment:評価)では、S・Oの情報を統合して栄養状態を評価し、問題点と原因を考察します。P(Plan:計画)では、評価に基づいて栄養ケア計画(介入方針・目標・モニタリング項目)を記載します。SOAPノートは情報の整理と多職種との情報共有に適しており、記録の標準化にも役立ちます。
【記入例】対象者:80歳女性、要介護1、独居
S:「最近食欲がなく、ごはんが半分も食べられない」「肉はあまり食べない」
O:体重 42kg、BMI 18.2、血清Alb 3.1 g/dL、Hb 10.2 g/dL、握力 12kg(左右平均)、食事摂取量は推定エネルギー必要量の約60%
A:低栄養状態(BMI 低値、Alb低値、Hb低値)。タンパク質・エネルギーの摂取不足が原因。食欲低下・嗜好・独居による調理困難が背景にあると考えられる。
P:エネルギー1,400 kcal/日・タンパク質70g/日を目標に設定。嗜好に合わせた食材提案、補助食品(経口栄養補助食品)の導入を検討。1ヵ月後に体重・摂取量を再評価。
記入例はあくまで参考であり、実際の対象者の状況に合わせて内容を調整してください。また、施設や病院によって記録様式が決まっている場合は、そちらに従って作成してください。
栄養アセスメントは、身体計測・臨床検査値・食事摂取状況・身体症状・生活環境という5つの指標を総合的に評価し、対象者の栄養問題とその原因を明らかにするプロセスです。栄養スクリーニングと混同せず、それぞれの役割を正しく理解したうえで実施することが重要です。
書き方はSOAPノート形式が一般的で、主観的情報・客観的情報・評価・計画の流れで記録することで、情報の整理と多職種連携がスムーズになります。日々のアセスメントの質を高めることが、栄養ケアの精度向上につながります。
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